露点飽和散水システムの原理

露点飽和散水システムの原理

平成12年に改正したJIS(日本工業規格)では、試験室の標準状態を23℃・50%と定めています。

標準状態を作り出す機構として一般的によく採用されるのは、直膨システムと呼ばれる独立温度湿度制御システムです。冷凍機による過冷却・過除湿により低温・低湿状態を作りだし、再加熱・再加湿することにより、高精度(±1℃・±2%)の温湿度管理をしています。過冷却と再加熱のバランスにより高精度を維持するため、電気エネルギーの消費が大きくなります。

露点飽和散水システムでは、冷却した水と循環空気を十分に接触させて加湿された低温の飽和に近い湿り空気を作り、それを再加熱して温湿度をコントロールします。
湿り空気線図上で23℃・50%(A点)の露点温度は11.6℃(B点)であり、11.6℃・100%の飽和空気を23℃に再加熱(B点→A点)すると23℃・50%になります。(「湿り空気線図の見方」参照)
11.6℃・100%の飽和空気(B点)を作り出す機構が露点飽和散水システムであり、11℃以下の冷水を散水することにより、湿度が低ければ蒸発により水加湿が行われ、湿度が高ければ飽和点以上は除湿されます。

自然の物性原理を応用しているため、直膨システムに比べ電気エネルギーを約40%以上節約できます。

加湿方法

標準状態(23℃・50%)を作り出すには冷水を散水しますが、常温で散水すれば無理のない加湿ができます。更に散水温度を電気ヒーターで上げてやれば、より多くの加湿量が得られます。
常温での蒸発で加湿するため、100℃で蒸気として加湿するタイプの欠点である加湿器へのスケール(不純物)固着による性能低下、不具合のリスクがありません。

湿り空気線図の見方

自然の空気は水分を水蒸気という目に見えない状態で含んでいます。
この複雑な特性を持つ自然の空気を湿り空気と言い、2つの値が解れば、その空気の状態を求めることができるように表したものが空気線図です。一般的に使う値の持つ意味を説明致します。

  1. 乾球温度  ℃(DB)
    通常の温度計で見る温度。
  2. 湿球温度  ℃(WB)
    水で濡らしたガーゼを着けた時の温度。水分が蒸発するので気化熱を奪われ低い温度を示します。
  3. 露点温度  ℃(DP)
    相対湿度100%のそれ以上水分を含めず結露を起こす時の温度。
  4. 相対湿度   %(RH)
    日常で使う湿度。飽和空気の何%の水分を含んでいるかを%表示しています。
  5. 絶対湿度   kg/kg'(x)
    乾燥空気1㎏中に含まれる水の重さ。
  6. エンタルピ  Kcal/kg'(i)
    湿り空気の持っている熱量。
  7. 比 体 積    m3/kg'(v)
    空気1kgの体積。

例えば乾球温度20℃・相対湿度65%の湿り空気はそれぞれの線の交点Pを求め、その時の露点温度は13.1℃・湿球温度は15.8℃・絶対湿度は0.0095kg/kg'・エンタルピは10.6Kcal/kg'・比体積は0.843m3/kg'と読み取ることができます。